
文部科学省の調査によると、小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、「学習面又は行動面で著しい困難を示す」と判断される割合は8.8%(※1)と推定され、35人学級の場合、およそ3人に相当する。この調査では、聞く・話す・読む・書く・計算するといった学習面のほか、不注意、多動性・衝動性、対人関係やこだわりなどの行動面についても調査し、教育・福祉分野での支援ニーズの実態を明らかにしている。
こうしたなか、放課後等デイサービス(放デイ)など支援の受け皿も拡大し、事業所数は2023(令和5)年時点で21,122事業所(前年対比8.8%増)に達した(※2)。一方、現場では個別支援計画に必要なアセスメント(※3)が十分に実施できないという課題がある。アセスメントに必要な知能検査の実施には専門資格が必要なうえ、同じ検査質問を用いるため再検査には一定の間隔を空ける必要があり、数か月単位で変化する子どもの特性を捉えにくい。
こうした状況に対し、子どもがゲームで遊ぶことで認知機能を測定し、支援計画に役立つレポートを自動生成するクラウドサービスを提供しているのが、町田市のレデックス株式会社だ。支援員不足が深刻化するなか、経験や勘に頼りがちな見立てをデータで補完し、特性に合った支援をサポートする同社を取材した。

※1:文部科学省「通常学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(令和4年)
https://www.mext.go.jp/content/20230524-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf
※2:厚生労働省「社会福祉施設等調査の概況 」(令和5年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/23/dl/gaikyo.pdf
※3:利用者の心身状況、生活環境、特性、得意・苦手なこと、意向などを、面談や観察を通じて収集・分析すること
ポイント
課題の背景・活動のきっかけ
● 原点は「子どもが学び・考え・やってみる」教育観
同社社長の五藤博義さんは、東京大学教育学部で教育社会学を専攻し、教育を社会や集団のダイナミクスの中で捉える視点を培った。その後、流通業の人事企画に携わるなかで、マサチューセッツ工科大学が開発したロボット言語「LOGO」と出会う。「子どもがコンピューターを動かすことで学ぶ」という発想に可能性を見いだし、日本語環境で使えるような設計・普及に取り組んできた。この経験が、LEDEX(Learn Design Experiment=学び、考え、やってみる)という同社の社名の由来にもつながっている。
● 教育×デジタルのキャリアが事業を形に
その後従事した株式会社ベネッセコーポレーションでは、ニューメディア研究所長としてデジタル教材開発部門に携わり、「こどもちゃれんじ」の立ち上げや通信教育のデジタル化にも関わった。その後、その専門性と経験を活かして独立し、2005(平成17)年にレデックスを設立。教育工学・デジタル教材の知見を福祉・医療領域の課題解決へと接続していった。
● 事業転機となった2人との出会い
子どもの発達障がいが社会課題として認識され始めた頃、五藤さんは花まる学習会の高濱正伸さんと出会う。2006(平成18)年に高濱さんが開発したパズルをデジタル化し、算数脳パズル「デジなぞ」を開発したことが、同社の転機になった。その「デジなぞ」を見た医師の橋本圭司さんから高次脳機能障害のリハビリに向けた製品の開発を依頼され、ここから現在のデジタルコンテンツシリーズの礎が築かれていった。
● 発達に応じた支援を「脳バランサーキッズ」の誕生
発達障がいには自閉スペクトラム症・ADHDなど様々な傾向があり、特性は一人ひとり異なる。視覚優位、ワーキングメモリーの弱さなど、個々の特性に応じた支援が求められるが、児童発達支援の現場ではスタッフの経験や勘に依存する場面も多く、専門検査も頻繁に実施できないという課題があった。こうした状況のなか、子どもの認知機能を客観的に可視化し、現場で広く活用できる仕組みとして同社が開発したのが「脳バランサーキッズ」である。

2017(平成29)年にリリースした「脳バランサーキッズ」
活動の特徴
● ゲーム感覚で認知機能を測る
「脳バランサーキッズ」「脳バランサーキッズ2」は、発達に困りごとを持つ子どもを支援する放デイや特別支援教育施設向けのデジタルソフトである。子どもがゲーム形式の課題に取り組むだけで、結果を自動分析・保存し、特性に応じた発達指数を算出する。専門家チームが検証した13~17種のタスクにより、「注意・抑制」「協調運動」「推理・応用」「視空間認知」「言語理解」「記憶」の6つの認知機能を総合的に分析し、結果はグラフ化され個別支援計画の作成に活用できる。導入しやすい月額サブスクリプション方式として展開、2025(令和7)年4月にはクラウド版「脳バランサーキッズ2」もリリースし、自宅でも利用できる機能で通所が難しい子どもにも対応する。

クラウド版の「脳バランサーキッズ2」

ゲーム結果から個別支援に必要な認知情報が得られる
● 専門職不足を補う、現場で回る仕組み
支援現場では、WISC(児童用知能検査)などの検査には専門資格が必要であることや、スタッフによる見立てにも経験が求められることなどから、客観的なアセスメントが十分に行えないという課題がある。その結果、「注意力が弱そう」などといった感覚的判断に頼らざるを得ず、特に経験の浅いスタッフほど見立てにばらつきが生じやすい。脳バランサーキッズは結果をデータとして可視化することで、アセスメントや保護者向けレポート作成を支援。動画やオンラインセミナーで活用法も提供し、現場全体の支援力向上を図っている。こうした取り組みは、取引先である営業店からの紹介をきっかけに、多摩信用金庫主催の第23回多摩ブルー・グリーン賞へ応募することになった。その結果、技術・製品部門(多摩ブルー賞)多摩みらい賞を受賞した。

保護者レポートを半自動作成

放デイに必要なアセスメントを提供
● 達成体験が自己肯定感を育み、次のステップへ
同ソフトは、達成に応じて演出を盛り込み、自己肯定感を育む設計となっている。五藤さんは「例えば、ワーキングメモリーが弱い傾向がある子どもには、忘れっぽさを責めるよりも、メモを貼るなどの工夫によって『できた』を増やすと伸びます。親や先生から褒められても嬉しいけれど、一番力を発揮するのが友達から褒められること。結果を活かして、その子の得意分野をイベントに盛り込むなど、成功体験を積ませる工夫ができます」と話す。施設向け動画やセミナーでは活用法を解説し、専門知識がなくても支援力を高められる体制を整えている。
● 生活・社会機能の獲得を支える「Life Skills」
生活機能発達支援プログラム「Life Skills(ライフスキル)」は、生活機能(日常生活の動作)や社会機能(社会生活に必要な態度・行動)を獲得するための支援方法を助言するクラウドサービスだ。15種類のデジタルパズルで認知機能を測定・強化し、その子の認知機能バランスと照合して最適なトレーニングを提案する。「一人で洋服の脱ぎ着ができる」「公共交通機関を利用できる」「他の人と適度な距離を保って関わることができる」などの122の具体的なニーズに対する支援方法をデータベース化。子どもはゲーム感覚で取り組みながら、日常生活や将来の社会参加に必要な力を身につけていく。五藤さんは「私自身もADHD特性がありますが、どんなに頑張ってもできなかった逆上がりが、中学生になったら急にできるようになりました。動作の不器用さは脳の発達と関係します。できないのではなく、発達の段階の違い。その子に合った方法を選べば伸びていきます」と話す。

「Life Skills(ライフスキル)」利用者メニュー

発達チェック・トレーニングメニュー
目指す未来
どのような特性の人でも活躍できる社会をつくること。
パートナー・関係先
[モデル施設]児童発達支援・放課後等デイサービス コアヴィレッジ
[事業パートナー]株式会社ネットアーツ
[事業パートナー]株式会社健生
[大人向け事業総代理店] 株式会社トータルブレインケア

