未来を創るたまの企業
地域とともに歩むインフラ企業
ごみ収集車の絵本から広がる交流
株式会社東光
[2026年04月 取材]

朝、何気なく家の前に出したごみが、いつの間にかきれいに回収されている――。そんな日常の裏側には、地域の暮らしを守る責任を背負った仕事がある。株式会社東光は1964(昭和39)年の創業以来、東京都東村山市と清瀬市で一般廃棄物(※1)の収集・運搬を担ってきた。地域の衛生環境を支える“見えないインフラ”として、半世紀以上にわたって信頼を積み重ねてきた。
その強みは、単なる受託業務にとどまらない点にある。未経験から人材を育て、自社内で技術を継承していく仕組みを整え、誰もが複数の現場を担えるまで丁寧に育成する。また、17時退社・残業なしを基本とする働き方を実現することで、働きやすさと安定したサービス提供を両立させている点も特徴的だ。
さらに近年、ごみ分別や出し方のルールを子どもに伝える絵本『シューシューとパッカー』を周年プロジェクトの一環として制作。併せて絵本に登場する収集車(パッカー車)を実車化する取り組みを展開し、地域との新たな接点を生み出している。暮らしを支えるだけでなく、未来の担い手にも働きかける同社の挑戦を、東村山市秋津町のオフィスで取材した。
※1:家庭の日常生活から出るごみ(家庭系)と、オフィスや店舗などの事業活動から出る産業廃棄物以外のごみ(事業系)の総称
事業の特徴
時代の変化とともに進化してきた事業の軌跡
株式会社東光の歩みは、多摩地域の都市化の進展とともに形づくられてきた。東村山町が市となり、市制を施行した1964(昭和39)年に創業すると、汲み取り式トイレのし尿収集を主軸とする事業をスタート。下水道が整備されていなかった当時、バキュームカーによる作業は地域の生活に不可欠であった。その後、高度経済成長とともに下水道の普及が進むと、事業を大きく転換する。下水道工事や水道関連工事へと領域を広げ、社名も「東光建設」へと変更したが、インフラ整備が行き渡るにつれて、工事需要も次第に減少。国の政策で汲み取り事業者がごみ収集へと役割を移行していく動きに応じて、同社も再度舵を切り、1980年代後半から徐々に、現在の主軸である一般廃棄物の収集運搬へと2度目の事業転換をした。そこから現在まで、東村山市と清瀬市の委託を受けて地域の生活ごみ収集を担う企業として事業を展開。2024(令和6)年、60周年を機に社名を「株式会社東光」と改めたのは、こうした変化の歴史を踏まえ、特定の業種に縛られず、社会の要請に応じて今後も柔軟に変化していく意志の表れである。
地域の衛生を支える“見えないインフラ”
ごみの収集・運搬はどのまちでも見られる日常の風景だが、万一ストップすると途端に困る、暮らしに不可欠な仕事でもある。自社の事業を「地域の衛生環境を支えるインフラ」と位置づける同社では、特にコロナ禍において、その重要性を改めて実感したという。「誰もが人との接触を極力避ける状況でしたが、ごみの収集は止められないため、私たちの仕事はいつも通りでした。そうして感染リスクを伴いながら、一軒一軒のごみを回収して周る私たちを目にした地域の方々から、感謝の手紙を数多く頂きました」と、代表取締役の小山武士さん。ごみ袋に貼り付けてあったそれらの手紙をスタッフ全員で読み、地域の衛生環境を維持し続ける原動力にした。「手紙はその後も大切に保管され、今でもスタッフにとって大きな励みとなっています。当たり前の日常は当たり前ではなく、自分たちもその一端を担っているという実感が、スタッフの使命感を支えています」と小山さん。
シンプルな仕事に宿る高度な技術と判断力
ごみを集めて処理施設へ運ぶ作業は単純に見えて、極めて高度な判断と技術が求められる。収集車一台にドライバーと助手の2人1組で、その日担当するエリアと処理施設を1日に複数回往復する間、現場では常に瞬時の判断が求められる。多摩地域では各家庭の玄関前や敷地内にごみを出し、1軒ずつ収集員が回収する戸別収集方式が主流だが、ごみの出し方や細かな分別ルールは各自治体によって異なる。ルールを逸脱したごみや曜日の間違いはよくあること。最も重要なのが安全性で、スプレー缶やライターなどが混入すると収集車の火災事故につながるため細心の注意が必要だ。収集・運搬中は収集場所や道路の衛生維持、事故や違反にも気を配る。この事業を40年以上続ける同社では、「安全・正確・迅速」という優先順位を全スタッフで共有し、どのエリアでも均質なサービスを提供する体制を整えている。担当エリアは3か月ごとに入れ替え、属人的な技術に頼らず価値観や判断基準を共有することが、サービスの品質を支える。
人を育て、組織を育てる経営
同社の特徴の一つは、「スタッフを大切にする姿勢」である。2023(令和5)年に、2代目の父、3代目の従兄弟に代わり、4代目社長として小山さんが就任してから、その姿勢は強く打ち出されている。採用は社長自ら丁寧に面接し、経験不問、運転免許がなくても積極的に受け入れる。これは自社の価値観やノウハウを共有し、ゼロから人を育てたいという狙いから。現場はローテーション制で、すべてのスタッフがどのエリアも対応できるようになっているが、これは災害や感染症流行などの非常時も業務を止めないためである。また、働きやすい環境づくりにも注力しており、17時退社・残業なし・土日休みを基本に有給取得のしやすさなど、誰もが安心して長く働ける仕組みを整備。結果、直近2年以上離職者なしという高い定着率を実現している。「会社はスタッフを大切にする。しかし良い職場は一人ひとりが互いを大切にして、ともに作っていくもの」。この考え方が組織全体に浸透している。
絵本から生まれた新たな価値
2024(令和6)年、60周年プロジェクトの一環で作成した絵本『シューシューとパッカー』は、大きな転機となった。これまで「仕様書に従った業務」を実行してきた同社にとって初めて、「自ら価値を創り出す」挑戦であったからだ。プロジェクトは小山さんの、「地域の方々に感謝を伝えるものを」という発案で始まり、同社課長の阿保(あぼ)季之さんをはじめ、地元・東村山の合同会社ハチコク社や東村山在住の絵本作家・すぎはらけいたろうさんに協力を仰ぎ、縦横148mm・12頁の小ぶりな絵本が完成した。「2台の収集車シューシューとパッカーが、ごみの出し方や分別の大切さを子どもに伝えるごく短い内容です。しかし制作途中で『これを実車化したら面白そう!』という意見が出たことで、地域との関わりが大きく変化しました。まちでごみを収集する2台に子ども達が声を掛けると、乗っているスタッフが絵本を手渡すように。それまでは道路ですれ違っていた収集員と子ども達の間に、温かい交流が生まれました」と阿保さん。さらに、周囲からの注目が集まったことから、同社スタッフにも良い変化が。「仕事に対する誇りや責任感が一層高まったほか、自社のPR、社内風土改革や採用活動など、本プロジェクトが社内外に好影響をもたらしています」と小山さん。

シューシューとパッカーがごみの出し方や分別の大切さを子どもに伝える
地域課題に向き合う次の一手
2026(令和8)年2月から新事業として、「片付け・不用品回収サービス」を始めた。高齢化や空き家問題の進行により、家庭の大量廃棄物処理に困るケースが増えているほか、無許可業者によるトラブル(※2)も社会問題になっている。同社ではごみ収集に関する長年の経験と市区町村の許可を受けた適正事業者だからこその、適切な処理と住民に寄り添うサービスを提供。単なる回収にとどまらず、費用を抑える分別方法や外部買い取りサービスの活用なども含む総合的なサポートを行う。さらに、ごみは不要なものではなく「資源」であるという認識のもと、リサイクルやアップサイクルの可能性も視野に入れているという。社会の変化とともに役割を変え続けてきた同社はこれからも、地域に根ざした課題解決型の企業として、新たな価値創造に挑み続けていく。
※2:一般家庭の廃棄物収集には一般廃棄物収集運搬業許可が必要。許可を持たない回収業者による高額請求や、換金性の高い貴金属やブランド品、家電のみを回収して大型ごみは回収を断るなどのトラブルが問題視されている。
お話を伺った人
(肩書き・氏名)
(左から)
株式会社東光
代表取締役
小山 武士さん
課長
阿保 季之さん
企業概要
| HP | https://touko-ltd.com |
| 代表者名 | 小山 武士 |
| 資本金 | 15,000,000円 |
| 創業 | 1964年 |
| 社員数 | 正社員35人、パート・アルバイト15人 |
