未来を創るたまの企業

2026.07.01
多摩市

防衛・産業・医療を支える
レーザー×衝撃波の研究開発メーカー

スパークリングフォトン株式会社

[2026年04月 取材]

画像はイメージ

 私たちの暮らしや産業を支える技術は、目に見えない領域でも日夜進化を続けている。波長・位相を揃えた光を集めて、直進性を高める「レーザー技術(※1)」は、強いエネルギーを生み出し、硬質材料の溶解・加工を可能にするだけでなく、防衛、医療、産業などの分野で幅広く活用されている。この最先端技術を多摩地域から発信する企業が、東京都多摩市のスパークリングフォトン株式会社である。学生時代からレーザーの研究開発に46年以上従事してきた金田道寛さんが、独自の技術を社会インフラの現場に導入し、活用するために2000((平成12)年に立ち上げた。

 同社の強みは、長年の知識と経験に裏打ちされた高い技術力と少数精鋭の対応力にある。防衛・警備分野では悪天候の夜間でも数キロメートル先の対象物を正確に捉える装置として、医療分野では身体への負担が少ない手術機器として、産業・インフラ分野ではトンネル壁面内部の欠陥を検出する目として応用されるなど、その可能性は広がり続けている。

 多摩から最先端を生み出すレーザー技術が、これからの社会をどのように変えていくのか、同社の光が切り拓く未来の姿を取材した。

※1:レーザー光は、光の性質が揃っているため遠くまでまっすぐ届き、狙った場所にエネルギーを集中させることができる。この特性を生かして、探知、計測、加工、通信、医療などに幅広く活用される。

 


事業の特徴

 

レーザーと衝撃波  2つのコア技術の社会実装を目指して起業

代表の金田さんは、東北大学においてレーザー科学・光工学を専攻し、社会人になってからは医療用レーザーの開発に長年携わってきた。2000(平成12)年12月、それまでの知見をもとに、レーザー発振と衝撃波発生という二つのコア技術を軸に起業した。同社の特徴は、特定の製品を作って売るのではなく、顧客の課題に応じてその性能や耐久性を満たす装置を自社で組み上げている点で、他社が実現できない案件を引き受けるケースも多いという。納品先には防衛装備庁、三菱重工業株式会社、西日本旅客鉄道株式会社や東京大学、東北大学など。レーザー分野の「最後の砦」として不可欠な存在である。

レーザーの仕組みと衝撃波の仕組み

 

極限の耐久性と信頼性が求められる現場で活躍

同社の製品が活躍するのは、防衛、医療、インフラ、通信といった社会基盤を支える現場である。これらに共通するのは、故障が許されないという点だ。例えば、防衛分野で掃海艦や巡視船(※2)に搭載される装置が悪天候や荒波で故障しては役に立たない。医療分野においては機器のわずかな誤差やトラブルが人命に直接関わる。「私たちの装置に求められる耐久性と信頼性は、車で言えば乗用車と装甲車ほど、一般的な装置とは異なります。過酷な環境でも長期間にわたり安定して動作することが大前提です」と金田さん。

※2:掃海艦は海中の機雷(爆弾)を除去し、安全な航路を確保する海上自衛隊の軍艦。巡視船は海の治安維持、警察・消防・救難活動を行う海上保安庁の船。

掃海艦や巡視船に搭載される装置を製作

 

防衛分野では見えない光で対象を捉える

防衛分野の代表的な製品が「レーザーレーダー」である。これは夜間や悪天候(雨・霧・雪)下でも高精細な標的撮影・探知が可能な超小型・軽量の艦船・ドローン搭載型レーザー照明・撮像システムで、巡視船や艦船に搭載される。可視光域(可視光線)以外の波長(近赤外線領域)を用いるため、相手に検知されにくいという特性を持ち、数キロメートル先の対象を捉えることが可能。海上警備や監視活動において重要な役割を果たしている。さらに近年はドローン対策としての応用にも取り組んでいる。

防衛分野の代表的な製品「レーザーレーダー」

 

医療分野では身体への負担を減らす手術用機器

医療分野では、レーザーと衝撃波を組み合わせた手術用機器「パルスジェットメス」が、東北大学との共同開発で臨床試験段階まで進んでいる。従来、脳下垂体腫瘍の手術は開頭が必要なケースも多かったが、この装置は鼻の穴奥から脳深部にアプローチし、身体への負担となる痛み・出血・傷跡などを最小限に抑えて腫瘍を切除できる。さらに、不整脈治療のための「衝撃波カテーテルアブレーションシステム」も臨床試験中で、レーザーによって発生させた微小な衝撃波を心筋に与え、異常な電気信号を抑制する仕組み。従来の熱を用いる不整脈治療とは異なり、血栓形成や周囲組織の熱損傷を抑えながら安全に治療を行えるとして注目されている。

脳神経外科領域で活用するパルスジェットメスを模型で説明する金田さん
レーザーと衝撃波を組み合わせた手術用機器「パルスジェットメス」
不整脈治療のための「衝撃波カテーテルアブレーションシステム」

 

産業・インフラ分野では見えない内部を可視化する

産業・インフラの分野では非破壊検査技術が同社の強みで、代表的な製品はトンネルコンクリートの内部欠陥を検出する装置「インパクトレーザー」である。西日本旅客鉄道株式会社で運用直前の同装置は、レーザーで作る衝撃波によって表面に微小な衝撃を与え、その反応を別のレーザーで計測することで内部の異常を可視化する。トンネルの保守点検では従来、ハンマーによる打音検査が主流だったが、これにより遠隔・非接触、かつ迅速な検査が可能になる。さらに同技術は航空機の機体内部の接着不良など、目視できない欠陥の検出にも応用が期待されている。

産業・インフラの分野の代表的な製品「インパクトレーザー」

 

技術の核と開発思想 自らの設計を疑う

「開発において最も重要なことは客観性です」と金田さんは語る。「自ら設計した装置であっても、数値と現象を客観的に見ることを常に心がけています。結果を都合よく解釈せず、必要となればゼロから作り直すこともあります」。同社の競争力の源泉は自社設計・自社製造であり、装置のほとんどがオーダーメイドだ。金田さんを含む3人体制で年間に約20台を開発・製造するほか、納品後の保守点検にも対応する。「レーザーに関する新しい情報や技術を知るためには、海外の研究者との交流も不可欠です。激しい技術競争のなかで事業を続けるためには、継続的な学習と検証も欠かせません」と金田さん。一方、同社のいまの課題は技術継承である。高度な専門性を持つ人材の確保は容易ではなく、少数精鋭で長年築いてきた技術をいかに次世代へ引き継ぐかが喫緊のテーマでもある。

 

次世代技術と社会への役割

世界で初めてレーザー発振が確認されてから約65年が経過し、その技術が成熟しつつあるなか、その先には光をさらに細かい単位(光子:フォトン)でコントロールする新しい技術の可能性が広がっている。光の最小単位である光子を扱うことで、計測や通信のあり方が大きく変わる可能性があるという。「例えば、極めて弱い光でも情報を読み取れるようになれば、より安全でムダのない計測ができるようになります。こうした未来を見据えつつ、私たちは現在の社会インフラを支えることを重要視しています。電気や通信が途絶えれば、私たちの生活は成り立たない。その基盤となる技術の革新を担うことに、強い使命感を持っています」。

 


お話を伺った人

 

(肩書き・氏名)
スパークリングフォトン株式会社
代表取締役社長
金田 道寛さん

 

企業概要

HP https://www.sparkling-photon.com
代表者名 金田 道寛
資本金 25,000,000円
創業 2000年12月
社員数 3人

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