未来を創るたまの企業

2025.10.01
立川市

誰もが安心して働ける未来を拓く
立川発のDEI先進企業

株式会社シーズプレイス

[2025年08月 取材]

 

 「女性が子育てと仕事を両立できずに職場を離れるのは当然」――そんな社会の風潮を変えたいという思いから生まれたのが、立川市の株式会社シーズプレイスである。設立以来、子育て支援やジェンダー平等などの様々な社会課題に向き合い、活動範囲を多摩地域の内外に広げてきた。創業10年目となる現在、同社は男女共同参画施設、保育園や児童発達支援スクール、東京都認定インキュベーション施設など計10拠点を運営し、総勢100名を超える従業員が働く企業に成長している。

 また、設立当初から一人ひとりが安心して働き続けられる環境整備にも注力してきた。スタッフは年齢や性別に関わらず勤務日数や時間を柔軟に設定でき、家族の病気などによる急な休みの際も互いに支え合う。さらにDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)(※1)の取り組みでも高い評価を獲得しており、地域をリードする存在となっている(※2)。

 常に「社会課題を事業で解決すること」を主軸とする同社。その取り組みは現在、各地域にしっかりと根を張り、たねが芽吹き、葉を広げ、大きな樹木へと成長しつつある。「暮らす地域で幸せに『育ち・働く』をデザイン」する企業として、存在感を高めている。

※1:多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の略称で、DE&Iともいう。多様な人材がそれぞれの個性を活かして活躍できるような、公平で包括的な環境づくりを目指す考え方

※2:「D&I AWARD 2024」において「D&I AWARD賞」を受賞、同時に「ベストワークプレイス」に認定

株式会社シーズプレイス


事業の特徴

 

原点は仕事と子育ての両立 社会課題の解決目指す企業

同社の原点は2012(平成24)年に設立したNPO法人ダイバーシティコミュに遡る。当初から「誰もがその人らしく笑顔で暮らせる社会づくりを地域から」という理念を掲げ、武蔵村山市で男女共同参画センターを運営。その後、NPOの枠組みを越えてより迅速に、より大きなスケールで社会課題を解決するため、同じ志を持つ女性数名が集まり、2016(平成28)年に立川市で株式会社を設立。立川市には当時約200人の待機児童がおり、働きたくても子育てと両立できずに仕事を諦める女性が多かったことを受け、翌年に保育園を併設するコワーキングスペースを立川駅南口に開設した。その後も、発達に課題を持つ子どもたちに専門的支援を提供する児童発達支援スクール、行政と連携した女性の創業・就業支援プログラムや地域で新たに事業を始めたい人に向けたチャレンジショップを展開。また、地域のイベントやニュースメディアの運営などを通じ、地域活性化にも注力している。こうして「暮らす地域で幸せに『育ち・働く』をデザインし、新しい価値を世の中に創造する」というミッションを軸に、しごと(創業・就業支援)、ウェルフェア(子育て支援)、ダイバーシティ(男女共同参画)、ちいき(地域活性化)の4事業を展開する。

コワーキングスペース「Cs TACHIKAWA」

企業主導型保育所「みらいのたね保育園」

しごと(創業・就業支援)、ウェルフェア(子育て支援)、ダイバーシティ(男女共同参画)、ちいき(地域活性化)の4事業を展開

 

常に変化する社会課題への挑戦 DEIを可視化する仕組みづくり

「社会課題は常に変化します。私たちが取り組むのは、その時々の課題を捉えて可視化し、解決につなげる仕組みをつくることです」と話すのは、代表取締役の森林育代さん。多様な人材が最大限に活躍でき、より本質的で効果的な組織や環境をつくるとして、近年注目を集めるDEIについても、同社は当初から企業理念の中心に据えてきたという。「多様な人々の視点が十分に反映されてこなかった社会構造を問い直し、誰もが声を上げやすい環境を整えるためには、声を可視化するプラットフォームが必要です。当事者限定の閉じた議論ではなく、広く社会に伝えて共有することが必要だと考えます」。その取り組みの一環として、2023(令和5)年に「DEIガバナンスコード」を制定。社内だけでなく、関わるすべてのステークホルダーに適用すると掲げている。さらに、最高DEI責任者(CDEIO)の設置や、事業横断のDEI共創チームを社内で立ち上げることで、多様性の視点が各事業に反映される。

2023(令和5)年に制定したDEIガバナンスコード

 

国立市と武蔵村山市の男女共同参画施設を運営 伝えるための工夫

2018(平成 30)年より国⽴市からの委託を受け、くにたち男⼥平等参画ステーション「パラソル」の運営を開始。また、2019(平成31)年からは武蔵村山市男女共同参画センター「ゆーあい」の指定管理事業を担っている(※3)。本事業では、年代や性別を問わず多くの人々にジェンダー平等の理念をどう伝えるかが大きな課題であるが、2施設ではスタッフが様々な方法と工夫を積み重ねている。「11年前に武蔵村山市男女共同参画センターで最初に開催したイベントは『パパのベビーマッサージ』でした。その様子を撮影して施設内に掲示すると、後日施設に来た高齢者の方々が見て「今は男性も育児するのね」「私たちの時代とは変わってきているのだな」などの反応があり、「男性の子育て」というメッセージが視覚で伝わりました。くにたち男女平等参画ステーションのパネル展示や情報誌も『いつも工夫が凝らされている』『新しい話題を取り入れていて学びが多い』など、地域の方々からご好評をいただいてます」と森林さん。

※3:2013(平成25)年から指定管理を行ってきたNPO法人ダイバーシティコミュからの継承

スタッフが作るパネル展示が好評のパラソル(左奥)

情報誌でもジェンダー平等の理念を伝える

一人ひとりが安心して働き続けられる職場環境づくり

同社は役員、正社員、パートタイムに関わらず子育て中のスタッフが多いこともあり、働きやすさには定評がある。スタッフは性別を問わず、子育てや介護などのそれぞれの都合に合わせて勤務日数や時間を設定でき、女性特有の健康課題には費用のサポートもある。子どもの病気などによる急な休みの際も、社内DXツール上で連絡すると代われる人がすぐに手を挙げるなど、誰かが寄りかかるのではなく、互いに自立しつつ支え合う社風が根付いているという。スタッフからは「小さな子どもがいて働きやすい職場がなかなか見つからなかったが、初めて両立できている」「社内に保育園があるので子どもを預け、すぐそばで安心して働ける」「怪我や病気以外の事情にも理解があり、子どもの学校行事やPTAなどに積極的に参加できる」「困った時には助け合う関係ができているので、自分も相談しやすい」などの声が多く寄せられた。

子育て中のスタッフが多く働きやすさには定評がある。併設の保育園に子どもを預けるスタッフも

 

地域に根ざした様々な事業が身を結ぶ DEIの取り組みで最高評価も

地域に根ざした事業を展開し、多様性推進や働き方改革に取り組んできた同社の歩みは、多くの受賞歴によっても裏付けられる。2019(平成30)年に立川市ワーク・ライフ・バランス推進事業所の認定、2023(令和5)年には東京都ライフ・ワーク・バランス認定企業にも認定されている。加えて2024(令和6)年はDEIに取り組む企業を認定・表彰する日本最大級のアワード(※4)で、最も多様性に優れた企業に贈られる「D&I AWARD賞」を受賞、同時に最高ランクの「ベストワークプレイス」にも認定された。さらに東京都からは「心のバリアフリー」サポート企業にも認定され、障害や年齢を問わず安心して利用・就労できる環境づくりも評価されている(※5)。また「TOKYOパパ育業促進企業」でゴールドを達成し、男性の育児参画を後押しする姿勢でも評価を受けており、同社が地域の中小企業でありながら多様な人が自分らしく働ける環境を整え、DEIの分野でリーディングカンパニーとして認知されていることを示している。

※4:株式会社JobRainbow主催の「D&I AWARD 2024」

※5:「心のバリアフリー」好事例企業11社のうちの1社に選定(令和6年度)

経済産業省・中小企業庁「はばたく中小企業300社」などにも認定

 

人の縁がつなぐ拡がり10年目からのこれから

10年目に入った現在は周年イベントに向け、HPや企業ロゴのリニューアルなどを進めており、企業としてもさらなる成長を見据える同社であるが、役員をはじめ全員が一貫して大切にしてきたものは、「人の縁」である。創業以来、多くの地域で人々や企業、応援者に支えられてきたからこそ今があり、今後はより多く恩返しをしていきたいという熱い思いがある。近年では23区や山梨県など、多摩地域外の行政や企業との連携も進んでおり、今後は地域価値の創造に取り組む鉄道会社や商業施設、デベロッパーなど、地域を巻き込む新たな取り組みにも挑戦したいと意気込む。「これからも『暮らし・育ち・働く』が隣接する幸せな地域をつくり続け、行政や企業の皆さまに信頼され、選んでいただけるパートナーとなることを目指していきます」という森林さん。DEIを実践し、社会課題の解決を事業として邁進するその挑戦は、多摩地域から日本全体へと広がっていく。

千代⽥区女性・若者会議の企画・運営

山梨県中央市女性デジタル人材育成・就労支援事業の企画・運営

お話を伺った人

株式会社シーズプレイス
代表取締役社長CEO 森林 育代さん

企業概要

HP https://csplace.co.jp
代表者名 森林 育代
資本金 1,000万円
創業 2016年9月6日
社員数 約109名(役員4名、正社員24名、その他約81名)

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